やや旧聞に属するが、先日、大阪高裁で、著作権法違反幇助の罪で控訴されていた、ファイル交換ソフト・ウィニー(Winny)開発者である元東大助手のK被告に逆転無罪判決が言い渡された。 検察側が上告するか否かはまだ不明である。
「新しいモノ作りの現場が萎縮する」
「違法コピーが蔓延することを開発者は予見していた」
どちらの意見もそれなりに首肯でけるものがある。せやさかい一審・控訴審で判断が分かれたんやろと思う。
ただ、科学・技術の成果によって齎された弊害にかかる責任を、その開発者に負わせるんは明らかに間違うとる思う。せやさかい、「たとい無罪であっても開発者には道義的責任がある」ちゅうコメントはマトモに聞こえるが、やはり不適切であると断じざるを得ないのである。司直の場で、開発者に悪意があったんかそうでなかったんかを見極めようにも限界があろうし、結局これはあくまでも「使い手」側の問題やろう。
まさか「出刃包丁は殺人に使われるから製造・販売を法律で禁止せよ」なんてアホなこと言うヤツはおらんやろう。電子レンジに入ったある真空管の一種のマグネトロン(磁電管)かて、戦闘機のレーダとかレーダ追尾ミサイルとか、人殺しの道具に転用でけんねんさかいにな。ケータイに欠かせんHEMT(高電子移動度トランジスタ)かてまた然りや。
首都圏の超一流国立大学の教授に、「人殺しの道具になり得るものを研究してる男に娘はやらん」やなどと言うてるのんがおんのんを人づてに聞いたが、エエ年こいてそないなこともわからんとはアホ丸出しである。
ただ、もしかわしがこのK被告ほど優秀なプログラマであったとしても、Winny開発・公開は躊躇したやろな。電子化された著作物がいわゆるピア・ツー・ピア技術で著作権者の知らん間に不正コピーされまくる可能性を知っておったら尚更である。瓜田の沓、李下の冠の類やからな。このソフトに関する問題が電気通信主任技術者試験に出題されておるが、それは、これが現在の電気通信に欠かせないものであるからちごて、むしろ不正コピー・ウイルス感染・情報漏洩の原因になってるからやろう。これやから、Winnyを純然たる「文明の利器」と看做すことは困難やな。