E-BOMBERのアホアホブログ

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わしの鉄道事情大研究・信楽高原鐵道(2)

 9日にドイツ・バイエルン州で列車正面衝突事故が起こったが、近代国家でこないえげつない事故が起こったことに衝撃を覚える。鉄道はクルマみたいにすぐには止まれんのんで、衝突を防ぐために「閉塞」ちゅう概念を導入する必要がある。これは、線路に「閉塞区間」を設けて、1つの閉塞区間に1列車しか入られへんようにする仕組みや。この閉塞を行うためには連動装置などからなる保安装置を用いるんで、せやさかい、衝突事故が発生した場合、鉄道の専門家はまず保安装置の不具合を疑う。ドイツの事故もまずそれに間違いない思うが、それだけに衝撃的なこっちゃった。

 せやけど、事情をしらんアホなマスコミは、信楽高原鐵道(以下信楽)事故の直接的な原因である「赤信号無視」と、信号不具合時の運転取扱実施基準を逸脱した行為のみを論うて信楽を非難しよってんやんけ。このマスコミの姿勢には本家の川島氏も半ば呆れながら批判してるが、マスコミちゅうとこは記者の専門知識をわざと活かせんような人事をするとこやさかいどもならん。第四の権力において特定の記者が特定の分野を壟断することはまずいんでそれを防ぐために必要(百目鬼恭三郎「新聞を疑え」)なそうやからな。その弊害として記事の質が劣化するんやけどな。

 信楽線は三セク化された当初は全線1閉塞区間しかなかったんでスタフ閉塞方式を採用しとった。これは、閉塞区間毎に唯一のスタフ(RPGのレベル1の魔法使い系または僧侶系キャラの武器アイテム)を割り当て、このスタフを持ってへんかったら当該閉塞区間に列車を入れれん。欠点はスタフがユニークなんで、閉塞区間の終点に複数の本線や引き上げ線があっても列車を続行して運転でけんことや。スタフと通券を併用し、通券を持った列車がスタフを持った列車を従えて運転する票券閉塞方式にすれば続行運転も一応可能やけど、貴生川駅の構内配線では信楽とJRの続行運転はでけるけど信楽同士の続行運転が不可能や。このままでは「世界陶芸祭セラミックワールドしがらき'91」開催時に輸送力不足になるんは明らかやった。

 歴史的には、雲井駅は交換可能な「一般駅」やってんやけど、同駅は後に貨物営業廃止で「旅客駅」に格下げになり、貨物ホームや交換設備が撤去されてしもた。列車増発のためにここの交換設備の復活も考えられたやろうけど、同駅が信楽駅側に寄り過ぎとったんで、別な場所(小野谷信号場)に交換設備を新設してんな。せやけど、何で国鉄時代に中間地点附近に信号場を設けんと雲井に設けたんかはこの後明らかになる。

 閉塞方式は、続行運転に対応してしかもスタフ閉塞やタブレット閉塞よりも迅速に列車交換が行える単線自動閉塞方式に変えられ、同時に信号現示とポイントの切り替えを自動化する自動進路制御装置も導入された。これで閉塞区間が2つになり、信楽線は2列車以上(信号場で上り1列車待避の場合は下り2列車可。但し、貴生川はJR直通列車以外は上り1列車のみ可)が同時に入線でける路線になり、輸送力は倍以上に増えた。

 ただ、「世界陶芸祭」側の信楽側への必要な輸送力の照会が1990年3月と遅かったんで、信号場設置は突貫工事で行われた。それに、信楽にはこれまで単純なスタフ閉塞しか扱うた経験がなかって、自動閉塞の取扱を行えるようにするには一定以上の習熟期間が必要やのにそれも確保でけん上に、信号システムがトラブった時の運転取扱変更(代用閉塞方式)の訓練も十分に行えんかった。これも事故の大きい要因なった。

 この他にも、JR西・信楽の双方で、運輸省(当時)近畿運輸局の認可を必要とする改造を無断で行ったことが大きい要因として挙げれる。JRからの乗り入れ列車の貴生川到着が遅れ、本来なら小野谷ですれ違うはずの上り列車が先に小野谷を出て貴生川に向かってまうと、草津線の本線が通過線を除いて2線しかない貴生川で乗り入れ列車が抑止され、草津線のダイヤがさらに乱れてまう問題があった。そのため、そんな場合に小野谷で上り列車を抑止するため、JR西から同社亀山CTCセンターの「方向優先てこ」操作を用いて小野谷上り出発信号に「赤」現示を出す提案がされたそうや。

 せやけど、他社の信号機を操作することは絶対にしたあかんことを信楽担当の信号機会社側から指摘されたんで、その代わりの措置として、亀山CTC-信楽駅間の専用電話と信楽駅から小野谷上り出発信号を「赤」現示さすボタンを制御盤に設置することが決められた。

 ところがや、事もあろうにJR西は信楽の「旧宗主国」としての驕りからか、自社の提案を押し通す意図で、こそっと方向優先てこを設置しよった。ほんで、信楽と協議をせんと一方的に信楽駅のボタン操作をでけんようにする改造を指示した。この方向優先てこが曲者で、まず貴生川駅の下り出発信号が「青」現示になってへんと小野谷上り出発信号を「赤」現示にでけんようにしたある「反位片鎖錠」なる連動装置やった。これやと、亀山CTCはてこ入れる前に貴生川の出発信号を「青」にして下り開通にし、てこ入れて小野谷上り出発信号を「赤」にしてからまた貴生川を「赤」にする二度手間を強いられた。こんなん単線自動閉塞や自動進路制御装置導入した意味のうなるやんけ。

 一方で信楽も悪手を打ってしもた。小野谷信号場は貴生川方から見て最大33‰の上り勾配があって、しかも急曲線区間であることから速度制限を強いられ、JR乗り入れ用の非力でずっしり重いキハ58系では無論のこと、SKR200系軽快気動車でも減速しもって入場するんはかなりキツイ。しかも小野谷信号場は上り・下りとも場内信号機はデフォルトで「赤」現示なんでATS(自動列車停止装置)のブザーが鳴る。まあここで確認ボタン押したらチャイム鳴るだけで運転士はブレーキ操作が任意になるねんけども、難しい運転操作の最中やからボタン押せんこともあるし、そうなると強制的にブレーキかけられてまう。

 運転士からのクレームを受けて、信楽はATSが動作せんようにする目的でこの場内信号機を勝手にデフォルト「黄黄(警戒信号;制限速度25キロ以下)」に変えよった。それだけやったらまだしも、信楽駅への列車進入を円滑化でけるように、従来は下り列車が信楽駅の手前に来てから信楽駅の場内信号機を「青」に切り替えとったんを、小野谷信号場下り出発信号が「青」なったらそれも「青」現示するよう無許可改造しよった。皮肉にも、この運転士らのクレームが彼らの運命を変えてしもた。

 これら一連の不正行為によって、列車が貴生川-小野谷間に在線中に亀山CTCが貴生川出発信号を「赤」現示にするためのてこ操作すると、反位片鎖錠の原理から小野谷下り出発信号が一度「青」(反位)なったらもうどないしたかてそれが「赤」(定位)に戻らんようなる(小野谷-信楽駅間に列車在線中は単線自動閉塞機能により「赤」現示になるが、下り列車が小野谷を出発してしもとったらもう間に合わん)。その結果、下り列車の進行に伴うててこの信号が信楽駅にまで伝搬されてしもて、下り列車入線のための信楽駅場内信号は「青」現示のままやから、その逆に上り列車のための信楽駅出発信号は「赤」でずーっと固定されてまうことになる。この状態から抜け出すためには、上述のように貴生川の出発信号を「赤」にする必要があるが、それがダイヤの乱れによって遅れたら信楽駅出発は「赤」が延々続くから、どんだけ駅や上り列車が混んででも列車出せんままや。

 こないした不具合は社内に信号取扱のプロがおってこそ初めてめっかるんやけど、三セクの信楽には鉄道の知識がまるでない役人崩れしかおらんかったんで見逃されてしもた。かくのごとく正面衝突事故が起こるべくして起こる条件が整えられ、運命の1991年5月14日を迎えることになる。(つづく)

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