日本が開発中のX-2戦闘機（1月28日に先進技術実証機ATD-Xから改称；一名「心神」）の中国報道が面白い。それも頻繁に採り上げられとるようで、余程気になってへんかったらこないな扱いにならへんやろう。
しかも、そのピントのおっ外し振りがいかにも中国メディアらしゅうてエエがな。これは単なる実証機やのに、「心神は殲－20には敵わない」とはの。これを見るだけでも、彼の国の技術開発への意識が低調やちゅうことがダダ分かりやがな。
高速増殖炉を例に挙げると、まず最初に実験炉（日本原子力研究開発機構(JAEA)の「常陽」がこれに相当する）を作製して試験を繰り返し行い、その次に原型炉（JAEAの「もんじゅ」やフランスの「フェニックス」）を建造して同じく試験を繰り返す。それが終わったら今度は実証炉（仏「スーパーフェニックス」）と来て、最終的に商業炉を製造して商業運転を開始する、ちゅう段階を踏むことになったある。X-2は高速炉で言うたら実証炉に相当する思うんで、これが戦場でミサイルぶっ放したり敵機とドッグファイトしたりすることはまず考えられん。
それに、戦闘機にも用途別に大小があるちゅう基本的なことがまるで分かってへんのがまた可愛いちゅうべきか。戦闘機を用いて爆撃を行う場合には、大型機を爆装した「戦闘爆撃機」を飛ばすことになる。航空自衛隊やったらF-15Jのようにエンジンが２基ついたある戦闘機を爆装するんやな。
せやけど、大型機は大出力のエンジンを搭載でけるんで最大積載量が大きいて高速飛行性能も高いんやけど、一般に操縦性と安定性が悪なる。これの根拠になるんがいわゆる「二乗三乗の法則」や。
二乗三乗の法則は航空力学の基礎の基礎て言われ、簡単に言うたら「小さい物体ほど飛翔体に有利である」ちゅうこっちゃな。翼が作れる揚力は翼の面積に比例するんで、機体が小さい程に揚力を有効活用でけて運動の自由度が高まる訳や。厳密には揚力と空気抵抗に由来する抗力との比率（揚抗比）を考えやんといかんが、ここでは簡単のために無視する。
例えば、体積１立方センチで質量１グラムの立方体に１平方センチの翼を２枚つけた時に得られる揚力を２（１平方センチ当たり１）とすると、１グラム当たりの揚力は２になる。一方で、これと同じ密度で体積１立米の立方体（質量は1000キログラム＝百万グラム）に前者と同じような感じで翼を２枚つけたら、その面積は２平米（２万平方センチ）やから、得られる揚力は２万やな。これやと、質量１グラム当たりの揚力は0.02と２ケタも小さなってまう。
つまり、飛行機は機体が大きいなればなる程に旋回性能や機体の安定性も悪なる。これは自然界でも当てはまり、例えばハチドリのようなめっちゃ小さい鳥は空中で停止（ホバリング）することがでけるが、オオワシのような大型の猛禽類は高速で飛べてもホバリングなんかでけん。こういう理由で、戦術戦闘機の一種の垂直離着陸機(VTOL)は小型にせんならんのやんけ。
中国のメディアのもう一つあかんとこは、航空機には自動車と同様「パワーウエイトレシオ」なるファクターがあることが分かっとらんこっちゃ。彼らは「心神に搭載されるIHIのエンジンの推力は１基当たり５トンしかない」として、「だからX-2は非力である」と吐かしてケツかる。せやけど、エンジンの性能が出力だけで決まるんやったら誰も苦労せんわい。
1991年のF1で、中嶋悟氏とステファノ・モデナがパイロットしたティレル020は前年のチャンピオンエンジンのホンダV10が搭載され、日本のファンの誰もがティレルの躍進を期待してた。せやけど、フタを開けてみたら020はトラブル続きで、表彰台はモデナの１度だけやった。その理由は、前年までのマシンのティレル019に搭載されとったコスウォースDFRに比べてホンダRA101Eが大きいて重かったためにマシンがリアヘビーなってアンダーステアが出たためで、つまり、エンジンとシャシーのバランスが悪かったからや。フロントウイング幅の縮小とかのレギュレーション変更の影響もあったかもしれんが、やはりエンジンが一番影響してたやろう。
自動車でも飛行機でも、エンジンが小型かつ軽量やったら、機体ないしは車体の設計の自由度が高なるんで、より運動性能の優れたモノに仕上げやすなる。この年にウィリアムズ・ルノーが擡頭したんも、エンジンとシャシーのバランスがようなったからやろう。IHIのエンジンは推力は小さいながらも、エンジンの単位重量当たりの出力が大きいんで、X-2も優れた運動性能が期待でけるちゅうこっちゃがな。
もしか、人民解放軍空軍とかに事情通がおったとしたら、このテのトンチンカンな記事に対して何らかの故障が申し入れられる思う。軍事学的に誤った情報が世間に流布されることは、軍内部への悪影響も考えれるからや。せやのにそれが放置されたままなんが今の状況なんで、軍の意識がどんだけ低調なんかちゅうことが窺える。やっぱし中共与し易しか？（つづく）
