産経新聞のサイトによると、邱国洪・中国駐韓大使は韓国野党幹部との対談の中で、もし韓国が終末高高度防衛(THAAD)ミサイルの導入を決定した場合、中韓関係は一瞬のうちに破壊されるとの趣旨の発言をしよったらしい。およそ外交官としての儀礼を失した発言やけど、それは単に中国人に礼儀が備わってへんだけやなしに、中国が焦燥感を露わにしとることを示しとる思う。
中国がこれまで反米・反日姿勢を鮮明にしてこれたんは、中国にとっても地政学的に重要な位置にある韓国が親中やったからや。せやけど、米国の圧力で韓国政府が日本と慰安婦問題で一応の妥結を見るなど対米事大主義外交に転換してんから、これは中共としては堪らんわな。そんでのうてもここへ来て経済が急激に悪化しとるとこやから、それはあちらさんからしたら深刻な問題やろうなあ。
周知の通り、THAADシステムは長距離弾道ミサイルを撃墜するためにあるんで、これ自体が中国への直接的な脅威になる訳やない。せやけども、仮にこれの迎撃成功率がほぼ100%やったとしたら、中国からしたら矛を持つ右手を縛られることになる訳やし、軍事的な攻撃力だけやのうて外交力すらも減殺されることになるんやな。THAADシステムの有効性が邱大使の発言から見て取れるわい。
この背景には、米国のドラスティックな政策転換があるみたいや。いわゆるシェール革命によって、米国は石油・天然ガスに困らんようなって、対イラン経済制裁解除を行うなど、中東から手ェ引き始めることなった。OPEC諸国は石油増産によってシェールオイルの採算割れを企図してんけども、掘削技術の低コスト化も進展しとるようで、どうもそれがうまいこと行ってへんみたいやねんな。中国経済の発展にブレーキがかかったことによる石油需要の低迷も産油国にとっては痛かった。
ISの跳梁跋扈やシリア内戦の泥沼化もあって、米は対処の難しい中東よりも、アジア重視を打ち出すようになったちゅうとこか。それにはもちろん、中国経済の斜陽化もあるやろう。中国の門戸開放を伝統的な外交政策にしとったんは言うまでもなしにビジネスパートナーとすることによる旨味を期待してのこっちゃったけども、人件費の高騰や成長の停滞だけやなしに、中国国内情勢の不安、中国人の気質など諸々の問題がある。シーレーンの脅威かてあるさかい、対中圧力印加は必須になってしもたんやな。
中国大陸の大混乱は日本だけやなしに米国かて返り血を浴びることになるから、それだけは是非とも避けたいやろう。少なくともその悪影響を海岸線までに留めとくために必要な手ェは打っとかんとえらいことなる。THAADシステムの展開がそれに対して一定以上の効果がありそうやちゅうことが、今回の駐韓大使の無遠慮な発言によってはしなくも露呈された恰好になったんやないやろか。(つづく)